アミーゴ学校 第1回目『DIYの暮らし』guest speaker テンダー

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逗子の素敵な仲間たちの企画によってはじまった、アミーゴ学校『DIYの暮らしシリーズ』

第一回目のゲストスピーカーとして登場したのは、テンダーこと、小崎悠太さん。

テンダーは、米国で先住民のサバイバル技術を学び、狩猟・解体、電気、ウェブ、政治などの研究、デザイン、執筆、講演などを生業に生きる、社会派ヒッピー。

2013年に鹿児島県南薩摩市の集落に移り住み、電気・水道・ガス契約ナシの年間家賃9900円の家「てー庵」を営みながら送る豊かな暮らしが、KTS鹿児島テレビによる1時間特番「テンダーの思い」(九州民放祭で優秀賞受賞、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート、2015年の第3位となる優秀賞受賞)にて反響を呼び、
今や講演依頼が後を絶たない「時の人」です。

【参考】テンダーの暮らしドキュメンタリー動画
http://www.dailymotion.com/video/x2u5qb7

この度のお話会の趣旨を、アミーゴ学校立ち上げスタッフのおひとり、小野寺愛さんが次のように語られています。

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<Tactical Urbanist / 戦略的都市生活者>という言葉を、みなさんは聞いた事がありますか?

「行政の動きが遅いと感じる分野において、町に住む個々人が、ゲリラ的・DIY的に小さなプロジェクトを行って前例づくりを重ねていき、長期的には行政をも巻き込んで町を変えていく・・・つまり、自分の町づくりの当事者になろうと考えて動いている人たちのこと。

自分が暮らしている町で、そんな仲間が加速度的に増えていったら面白い。

そんな思いから、町が誇る素敵な映画館CINEMA AMIGOを拠点に、暮らしを変えていくスクールをはじめるお手伝いをしています。

words by Ai Onodera

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まさに <タクティカルアーバニスト>たちが続々と生まれそうな土壌がととのっている湘南エリア、逗子市にて繰り広げられた、テンダーの『やわらかハード♪』なお話会をたっぷりとお聞きください。(2016年2月12日収録)

(そして、刺激を受け取った方は是非、この音源を大切な人たちにシェアしてくださいね☆)

 

<お話会前半:システム思考、持続可能性とは?自給自足についての考察etc…>

<お話会中盤:タクティカルアーバニズムについて、参加者の関心事、etc…>

<お話会後半:刺激的いっぱい!質疑応答コーナー☆>

 

【参考】ヨホホ研究所HP
http://yohoho.jp

 

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☆小野寺愛さんの<お話会レポート>をこちらに掲載させて頂きます☆

◎発想の転換。暮らしの時間配分を変えよう
最初からいきなりシステム思考を解説し、「環境問題っていうのは、お金にむきあう人間の心の問題です。
やってみちゃえば、それで済む話」と言い、ポスターの裏に計算式を書き出したテンダー。

「いま、日本で町に暮らす人たちの平均時給が998円です。
これで1日8時間働くと、7984円。
一方、ひとり暮らしの家賃平均が6万5千円で、それを12ヶ月支払うと78万円。
つまり、年間99日ぶんの稼ぎを、まるまる家賃に使っていることになる。

であれば、この家賃+光熱費+水道代をどれだけ減らすことができるかで、どれだけ自由に過ごせる時間を持つことができるかが決まる。
ちなみに、俺はいま、家賃が月1万円、水道・ガス・電気は契約なし。

日本の人は平均で1日3〜4時間、つまり年間でまる52日ぶんもテレビを見ています。
これは人生の12年分。毎日一生懸命、高い家賃を払うために働いて、家に戻ってテレビをみている。
それじゃ、自分より大きいものを考える時間なんてなくなると思います。

で、じゃあ毎日家に帰ったらソファに寝転がってピッとテレビをつける人が悪いのか、意思が弱いのか。
そうではなくて、そういうシステムの中に僕たちが生きちゃってる、ということが言いたい。
年間99日もの時間を家賃のために働くのが普通となっているシステムに生きていて、その中で、”これじゃダメだ。だから、もっと時給をあげよう” と考える人が多いんです。
でも、システムそのものを俯瞰したらわかることだけど、時給をあげることでは根本的には変わらない。
“家賃と光熱費を減らそう” “じゃあ地方へ行こう” と考えることがレバレッジポイント。
そうやってはじめて、物ごとが劇的に変わりだします。

環境問題も ”どうしたらいいんだろう。
まだまだ勉強不足だから、自分にできることを知るためにワークショップに参加しよう” じゃ変わりません。
年に4回、頑張って仕事帰りに勉強しにいったって、年に52日はテレビ見てるんだから。

ワークショップに参加するよりも、とにかくやってみる。試行錯誤と失敗を重ねながら自分で考えてみる。そして、それをやるために、まず暮らしの時間配分を変えてみることを提案したい」

◎自給自足より、共存の知恵
「自給自足がしたいんです、とよく相談されるけど、残念なニュース。
俺はインフラに頼らない暮らしはしているけど、自給自足はしていないです。それは目指していない。

仮に、自分のことと家のことだけやってるひとを ”暮らし職人” と呼ぶとしましょう。
暮らし職人になると、素敵な暮らしを作れていいんだけど、それだけやっていたら時間をめちゃくちゃとられます。
話が、”自分と家”という小さなレイヤーから広がらない。
“自分と家” の周りにあるはずの大事なレイヤー、”政治” だったり、”自然そのもの” にかける時間がなくなる。
3つのレイヤーを自由に行き来することができるように、俺は暮らしの時間配分を考えています。

トラッカースクールに行って先住民技術を学んで、ナイフ1本で森の中で生きていけるようになった。
でも、それだけ追求していたらいいのか。いいわけない。
政治の林業政策が変われば森は消えるし、そもそも自然そのものがないと生きていけない。
専門性というのは、自分のことだけやってればいいという責任放棄でもあると思っているんです。
自分と家のことだけやってればいいというのは違うし、政治家は政治だけやってればいいというのも違う。どんな仕事でもそう。

それに、自給自足に憧れるという人は、もやっとした素敵なイメージの中の何に憧れているか、実際にやりながら考えてみるといい。
自給自足でただ生きていく、ということを目標にして徹底的に追及したら、わりと簡単にできちゃうから。
テント暮らしで1日1食にすればいい。托鉢でもやっていけるかもしれない。
畑を真剣にやれば、1日3食食べることもできるかもしれない。だけど、そうじゃないでしょ。

今の自分の暮らしも、すぐそこまで電気がきているおかげで集落があって、その集落の人たちがいるから成り立っている。
山の草刈りもみんなでやっているし、野菜のお裾分けもいただく。
集落がなかったら、インフラに頼らない暮らししてます、なんて言ってられなかったと思う。

だから、みんながどうやって共存関係を作れるか、それが自給自足よりずっと大事だと思っています」

◎最貧国+10%の暮らし=持続可能性
「持続可能性ってどんなことか、俺、実は知らなかったんだということを最近知りました。
ドネラ・メドウスという人が80年代に書いた本で、わかったんです。
彼は、今のままの暮らしをしていて、今のままの文明があと100年持つことはあり得ないと30年前に書いていました。
地球の資源は有限だから。

たとえば、当時すでに、金属が昔のようにはとれなくなってきていた。
同じ銅でも、50年前は100掘れば、使える銅を90とることができた。
それが今は100掘っても10しか使えない。
だから前よりもっと深く、もっと遠くまで行って採掘をしなくてはならず、同じ車の商売でも、材料になる部品の獲得に時間と労力がかかるようになった。
作れば作るほど儲かる時代は終わり、作っても儲けは微々たるものという時代を経て、同じやり方で作っていても赤字になるときがくる・・・という話。

彼はそこで、低成長にすることで文明を続けようと言って、条件を3つあげました。

1つめは、1組の夫婦で生む子どもは、2人までとすること。
2つめは、科学技術を、汚染を止める方向にシフトさせること。
3つめは、人類の生活水準を(当時の)最貧国+10%程度とすること。

ショッキングですね。地球上の全人類が、最貧国+10%の暮らしをしなくてはいけない。
こういう条件で今すぐに暮らしを作り直してはじめて、文明を100年後にも続けていることができる。
・・・かもしれない。それが持続可能性だ、と。

俺、それを知らなかった。
彼が書いてから30年後のいまこれを読んで、もう「破壊を止める」ことは不可能で、「どう軟着陸するか」でしかないと思った。
残った人たちがどう生き残るかの準備をしようと、そんな気持ちでいます」

◎思想をともなう技術を身につけること
軟着陸の話をしてから、100円ショップでも売っているような普通の細い麻ひもを取り出したテンダー。
「1万年前、今のロシアからアラスカへと、ある一族が当時浅瀬だった海を渡ったときの技術、トラッカースクールで学んだ先住民技術をひとつ披露します。すぐにできるから、みんなでやってみよう」

細い麻ひもは、それだけでは力の強い人が思い切りやれば、引きちぎることができてしまう。
この紐を両手で持ち、両側から「ヨリにヨリをかけてよる」と、真ん中にくるん、と輪ができます。
その輪を口にくわえ、さらに両側からクルクルとまわしていくと・・・おお〜!あっという間に、ロープ状に、きれいにねじれました。

「このロープ状の紐2本で、さらに同じことをすれば、倍の太さのロープができる。
これって、1万年前から今に伝わっている技術なんです。
この強度のロープが作れたら、布が一枚あればタープになる。簡単な家ができちゃいます。

それに、ほら、これ。セイタカアワダチソウです。
これ1本あれば、杉の枯れ枝とこすりあわせて火を起こすこともできる。とかね。

あとは、鉛筆の太さくらいの細い水の流れを24時間確保できたら、それで4人家族分の水が自給できます。
うちは、家から8メートル上部に水源があって、それを200リットルのタンクに貯めてる。

俺は、自給自足というモヤッとしたものを追うよりも、こうした思想を伴う技術を学ぶほうが早いと思っています」

◎冷蔵庫哲学
「こうして一万年も前から伝わる知恵で、環境も壊さない技術が、持続可能性だと思う。
何が持続不可能か、みんな知らないだけだから、いまあるシステムの中で暮らしているひとが悪いわけじゃない。
自分が何気なくパチッと押す電気のスイッチの先に、オーストラリアの先住民聖地でのウラン採掘や、労働者の被曝や、その副産物の劣化ウラン弾を使った戦争や、イラク人数千人と米兵数百人の被害、そういう大きな構造があって、電気をじゃぶじゃぶ使うことはそんな構造を支えているかもしれないことを、みんな知らないだけ。

でもね、みんながみんな、完全に電気契約ゼロにしなくてもいいと思います。
たとえば、従量電灯Aという契約はどうかな。これにすると、月に260円で5アンペア使える。
これいらないな、これは代替できるな、という風に削ぎ落としていけば、毎月の電気料金を1000円にするところまでは、簡単にできますよ。

俺がすぐに使うのをやめたのが冷蔵庫。あれは、ため込む文化を作るもの。昔は、食べきれなかったらお裾分けしていた。
そうすることでご近所づきあいが生まれていた。冷蔵庫があると、食べきれないぶんを貯蔵するでしょ。
でもずっと貯めておいても腐らせちゃったりして。結局、ためこんで、悪くなる時期をのばしているだけじゃないですか?
一人暮らしの家の冷蔵庫をあけてみると、冷蔵庫に入っていなくてもいいようなものばかり入っていたりしますね。
冷蔵庫は持つものだから、と何も考えずに買うのではなくて、なんでも「本当に必要なのか?」を考える癖をつけるといいです。

それでも、小さな冷蔵庫があると助かるときもある。あまり使わないけど、うちにも実は置いてはあります。
その場合、ドアが上開きのものを選ぶといい。横開きの冷蔵庫、あれは電気効率でいうとすごく悪いんです。
冷気は下にたまるから、全部逃げちゃう。ドアが上についている上開き式の冷蔵庫をひとつ持っていて、底に水が入ったペットボトルを数本入れておいたら、2日に1回、2〜3時間稼働するだけで0度を保つことができます。
普通の冷蔵庫内の平均気温は4度なんだけど」

◎脱ユーザー、主体的に生きる人生へ
「わが家電力を出版してから、ソーラーパネルを作るワークショップを依頼されることが多いです。
でも、最近はお断りするようにしています。というのは、目的は、ソーラーパネルの完成じゃないから。
電気って本当は12歳までの理科の知識で、自分で作ることができる。
それなのに、考えることなく大きな電力会社からの電気を使い続ける生活を送る、それでいいのかもう一度考えようよ、ということを提案したくて本を作ったんです。

でも、ワークショップにでかけていくと、受け取ったキットを完成させることが目的化しちゃうでしょ。
しかも、できあがったソーラーパネルを1年後にもちゃんとフル活用できている人は2割もいないですよ。
なんか調子悪くなって、倉庫にしまってます、エヘ、みたいなね。それじゃあ、自分の頭で考えていることにならない。
ユーザーであることから抜けることができていないんです。電力会社のユーザーが、ワークショップのユーザーになっただけ」

◎試行錯誤を20回してからが「失敗」
だからまずは何でも自分で考えて作ってみて、うまくいかないと思うようなときでも3回はネバってほしいんです。
試行錯誤する間に、自分で考えるでしょ。そのプロセスが大事です。

非電化工房を主宰する発明家の藤村さんは、20回やってもうまくいかないときにはじめて失敗だと考える、と話していました。
いろいろやってもうまくいかず、5回くらい失敗したらどうするか。
諦めるのではなくて、むしろヤッタと思うって。そのあたりから、ライバルが減りだすから。笑。
それを超えて、20回失敗したらはじめて、あ、計画が間違っているのかなと考えるって。
その姿勢がチャレンジャーであり、プロトタイプをつくる人ですよね。

生きるって、悩んで工夫して、変化すること。与えられたパッケージを使うことではない。俺はそう思います」

◎ヒッピーを名乗る由縁
後半、アミーゴ店主の源くんから「こんなに実践的で、ロジカルな話をする人なのに、肩書きは社会派ヒッピー。それで誤解されないか、損してないかなと思うのですが、ヒッピーを名乗る由縁、教えてください」という質問がありました。

その回答はテンダーのブログ(「空気なんてよむな!ミレニアム世代のためのヒッピー論入門編 http://yohoho.jp/12960)に詳しいですが、テンダーは要約して、こんな風に答えていました。

「俺、旅をしていたときに、本当のヒッピーに会っちゃったんですよ。ロンゲでラブ&ピースなだけじゃなくて、正真正銘の本物ヒッピーに。

ヒッピーってそもそもベトナム反戦運動からでしょう?ベトナム戦争の頃、米国には徴兵制があったから、戦争に反対し、良心的兵役拒否を選ぶ若者が続出した。
彼らはやがて米国を出て、世界を放浪することを選びました。
自由と平和を愛し、封建的な伝統を否定した彼らが、のちにヒッピーと呼ばれるようになった。

だけど、なんで世界を放浪して、コミューンを作ってまで自分の国を出なくちゃいけなかったのか?
何があなたをそれほどまでにかきたてたのかと。俺がその、ヒッピー先駆けの大先輩に聞いたら、彼女はこう言ったんです。

“あなたにわかるわけないじゃない。わたしたちは、国を出たんじゃない。時代に押し出されたのよ”

出たんじゃなくて、押し出された。衝撃でした。

そんな本物ヒッピーに出会って俺、考えたんです。
ヒッピーたちは、いったん義務を放棄した。税金や、法律や、倫理や、道徳や、システムを。
そして、再度選びなおした人たちなんじゃないか。本当にそれが、すべての生き物や社会に必要なのであれば、義務を再度選びなおす。

課されたからやるんじゃない。義務を放棄し、責任によって選びなおすのが、本当のヒッピーなんですよ。
それを伝えていきたい気持ちも込めて、ヒッピーを名乗っています」

なるほどねー。

私も久しぶりにテンダーに再会するまで、ヒッピーと名乗るだけで毛嫌いして、テンダーの話を聞かない人もいるんじゃないかと、源くんに似た気持ちを持っていた。でも、どうでもいい心配だったのかも。
だって、今回いちばん前に座ってがっつり聞いてくれていた2人の職業を聞けば、税理士とファイナンシャルプランナー。笑。

異業種、背景多様な人たちが新しくて本物の暮らしかたを探している時代。
テンダーが惹きつけてくれた多様性、ばんざい!

最後に、テンダー流の平和の定義にも感激しました。

「平和とは、双方が主体性をもって、信頼を築くこと」

そうだね、そうだね。本当にそう。

メモは、以上です。

いやはや。一緒に地球の南周りを旅したときは、世界が抱える構造的な問題、自分自身の人生について、悶々と悩んでは疑問をぶつけてきていたテンダー。
あれから10年、自分なりに実践を重ねて、自分のことばで社会を語る頼もしい青年になっていて、勇気をもらった!感慨深い1日でした。

参加してくださった皆さんも魅力的な人ばかりで、これからはじまるアミーゴ学校のファシリテーターをしてくれそうな人がたくさん。
自分の「学びたい」が、イコール「もっと楽しく豊かな社会を作ること」になっている人たち、たくさんいるなあ!

リペアーカフェを開きたい
3Dプリンタをもっと活用したい
Forest Gardenをつくりたい
古民家にオンドルがほしい
キノコの栽培をはじめたい
雨水タンクをつくりたい
鶏を飼いたい
日乾しレンガから釜戸をつくりたい etc etc…

今必要なのは、偉い人からスゴい知識を教わる場所じゃない。
ユーザーとして「消費する」ためのワークショップでもない。
学び手と作り手の境界線はどんどん曖昧になっていて、みんなで主体的に社会に働きかけようと動き始めているこの感じ、いいなあと思います。10年後のこの町が楽しみ!

次回のアミーゴ学校、3月後半に開催したくて、動いてます。
小さくても素敵な実践を重ねたいTactical Urbanistな皆さん、アミーゴHPをチェックしていてくださいねー!

◎シネマアミーゴHP
http://cinema-amigo.com

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